Little AngelPretty devil
      〜ルイヒル年の差パラレル

   “冬催い一景”
 


年末は寒かったけれど、
それを忘れさせるよな穏やかなお正月だったねぇなんて。
ここ数年は何だかそんな始まりようの冬が続いており。
このまま暖冬かしらと思わせといて、
札幌の雪祭りは雪不足になんじゃなかろかとやきもきさせといて、
だってのが吹っ飛ぶほど、
節分の頃にいきなり冷え込みの、
雪も降りしきりのするのも定番となりつつあり。

 「今年なんて、
  もう“この冬一番の冷え込み”の連呼だもんな。」

ふわふかな金の髪に、色白端正なお顔と金茶色の双眸、
女の子かしらと思わせるよな、しなやかな肢体…という、
いかにも愛らしい見かけによらず。
唐辛子OK、ホットドッグには必ずマスタード、ピザにはタバスコ、
サビ抜き寿司なんて信じらんねぇという、大人ばりの“辛党”のくせに。

「…っと、あちあち。」
「ほれ、貸してみ。」

熱いのはやや苦手という猫舌で、
手指の皮も薄いのか、
蒸したての肉まんなんぞは
手ぶくろ越しでないと持っていられない。
そんななくせして、
冷めてしまうと美味くないと、一丁前なことも言う子なもんで。

「二つに割るだけでいいのか?」
「おう♪」

一応付けてもらった、二方だけ封のされた包み紙の中、
具をこぼさぬようにと、
パカリ・ふあふあ、湯気の立つ割りようをしてもらい。
厚手のタオルハンカチで待ち構えてた、
小さな両手に戻してもらえば、
甘辛のいい感じに煮てある豚バラとしんなりした玉葱の甘さが、
見た目から既に伝わってきそうな。
彼らの行きつけのお肉屋さんが、
冬場だけ限定で店頭にて売り出している中華まん。
スパイシーな味付けが、
本来は大人向けだが…そこはピリカラ坊やだから、
葉柱のお兄さんから奢ってもらったそのまんま、
冬場の大好物となっており。
練習帰りに立ち寄れば、必ずこんな風に二つに割ってもらいの、
はふはふと食いついて、

「ふわ、うんまぁいvv」
「ほれ、ジンジャエール。」

お隣の酒屋さんの、立ち飲みカウンターで売ってるジュース、
紙コップに注いだのを
渡してもらうところまでがワンセットという、
甲斐甲斐しさで、構われておいでの子悪魔様。
日頃日常の言動はどうあれ、
愛らしく整った幼いお顔を、
ほこりほころばせ、美味しいと笑うところは、
通りすがりの誰をも惹きつけてやまずで。

 “こういう顔ばっか、してりゃあいいもんを。”

三が日最後の三日に催されたライスボウル、
社会人チームの狡猾な策へさんざん毒づいたかと思えば、
振り回されて体力を擦り減らした学生チームにも、
容赦のない酷評並べたのがついさっき。
ただのいちゃもんだったらともかく、
一緒にTV観戦していたのが、
やはり大学生アメフトボウラーたちだったので。
同じような失態はすんなよなと、暗に言われたようなもの。
あんな巧妙な策でも
ちゃんと見透かさねぇと、迂闊扱いされんのか?と、
微妙にびびったのが何人か居たようで。
今年も鬼軍曹は春から健在というところ、
しっかと印象付けたばかりと来て。

 「やっぱピリッとしてるのがいいよな。
  カスタードあんとか、甘いの食べる奴の気が知れねぇ。」

可愛いお顔で、そんな一丁前のご意見を言うのも、
お店の人なんぞには、
まあまあ可愛い背伸びだこと…なんて思われているのだけれど。
背伸びでも何でもないんですよ、この子の場合はと、
ちみっとすまないような気になりながら、
自分も蒸かしまんをパクリかじった総長さんだが、

 「あ・ルイ、口の傍。」
 「んん?」

そっちじゃねぇよと自分の手を出し、
指先に掬ったお饅頭の側生地の欠片。
しょうがねぇなぁとぶうぶう言って、
そのままパクリと自分の口へ運んだ坊やだったのへ、

 「〜〜〜〜っ。////////」
 「だから。
  そこで赤くなるんじゃねぇ。//////」

一体どっちが年上なのやら。
微妙なやり取りかわしつつ、まったくもうもうと、
それでも擦り寄ったままな身は離さない。
トンガラシ坊やの、そんな可愛いところを拾えるような。
ああやっと冬も本番になったんだねぇ…。




  〜Fine〜  12.01.14.


  *この冬もまた、気温が乱高下するんでしょうかしらね。
   このままを限度に、
   暖かいまんまであってくれたらいんですけれど。


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